広帯域磁界検出型アンテナ

Drakeの資料を集めていたときに、SPR-4用として本体ケースの上の穴に差し込むループアンテナの紹介が出ていた。 SPR-4には、中長波用の専用プリアンプが用意されている。
詳しくは、ここを参照して頂きたい。  電波は電界と磁界の混合した形で伝搬してくると教科書に載っているが、このアンテナはシールドされたエレメントを使用することで、磁界部分の信号だけを検出する。 蛍光灯や、各種電気機器から出る雑音、イグニッションノイズなどは、電界成分が殆どなので、磁界成分だけ受信すればこうした雑音は低減できるというわけだ。
 

小さい方の写真はDrakeのカタログの物だが、なかなか雰囲気が良い。 中・長波用とのことであるが、別に共振回路も同調もしていないので、もっと広範囲に受信できるのではないかと考えた。 実際、短波でも実用になりそうだ。

簡単な構造なので、自作は容易だ。 同軸ケーブルの芯線をループにし、外部導体をシールドとしているが、頂上で、外部導体が切断さて居るのがミソである。 これが繋がっているとショートリングとなり、電磁シールドになってしまいアンテナにはならない。 頂上でシールドを切っているので、静電シールドとしてだけ機能する。 

 SPR-4のプリアンプ


以前、鉱石ラジオ用にループアンテナを作ったが、その時は細い塩ビのパイプを使った。 強度が足りず、フニャフニャになった。 その反省から今回は木で作ることにした。  写真にあるように、X型に10mmのラミン丸棒を組み、下には15mmの丸棒で支えを作った。 ベースも縁取りのある円形の表札用の木の板を使用した。 真ん中の丸い部分もホームセンターで、縁飾りのある板を購入し彫刻刀で溝を掘り、丸棒を挟み込むように張り合わせた。 
棒の先端には穴を開け、同軸が通るようにした。  木は白かったので、着色剤でマホガニー色に着色し、透明のウレタンニスで塗装した。 レトロな雰囲気が充分に出たと思う。 アンテナ本体は当初RGナントカという、外皮の直径1.6mmの細い同軸を使用した。 これは、後述するが、感度が悪かった。

SPR-4のプリアンプは、ベース接地のアンプであり、ジャックにアンテナを差し込むと動作する。 コレクタ側にはタンク回路が繋がっている。
このアンプを真似して、広帯域のアンプを作れば簡単だと思ったのだが、そうは問屋が卸さなかった。

SPR-4のプリアンプを真似して、FETでゲート接地のプリアンプを作ってみた。 失敗作であるから回路図は省略するが、FETとして、gmが高い、小さなFETを多数並列接続した構造の2SK147が手持ちにあったので使用した。 ところが、全く感度が出ない。 アレレ? 
またまたお楽しみの始まりである。 1周のループだし、同調させていないのだから、当然、めちゃくちゃ低いインピーダンスだと思われる。 そこで、入力インピーダンスの低いゲート接地を採用したのだが、何か間違っているのだろうか? 資料も知識も無いので、アマチュアの特権? カット アンド トライ で検討することにした。 理論的では無いが、理論なんて判らないので、実験有るのみである。

取り敢えず、デリカのアンテナインピーダンスメータを繋いでインピーダンスを測ってみた。 400オームまでしか測れないが、それ以上にインピーダンスが高いらしい。 アレレノレ! 


無線の師匠の、JH3FJAさんに愚痴ったら、QST誌に参考になる記事が出ていると言うことで、資料を頂いた。
短いロッドアンテナで長波を受信するためのプリアンプの製作記事であったが、目から鱗が落ちることが書いてあった。


QSTの回路図1 と 回路図2


私のつたない英語力で理解したところでは、こうした広帯域プリアンプの設計に関して次のような問題がある。

  1)微細な信号を増幅しようと、その信号にのみ注意を払った設計をしがちである。
  2)微細な信号を増幅する傍ら、非常に強力な中波などの信号も等しく増幅される。 この強力な信号が歪むと弱い信号が混変調を受ける
  3)これを防ぐには、強大な信号も歪まないで増幅できるようにすべきだ。
  4)増幅素子には、低雑音でかつ強大な信号が歪まないように充分なダイナミックレンジを持った、パワートランジスタが必要だ。


良い素子に充分な電源電圧、電流を与えると良いようである。 QST誌の例では、24Vで50mA程流すことになり、1.2W程消費する。
これに耐える高周波用FETとして、Crystalonics社のCP666という8w損失まで耐えるパワーJFETを使用している。 こうしたパワーFETは、日本の小売りマーケットからは消滅したようで、結局、上記のメーカから直接購入した。 小売りもしてくれる。 微少信号の増幅を目的とするプリアンプに、ヒートシンクを付けた、大きなFETを使用する。 言われてみればもっともだが、こうした観点は目から鱗であった。

また、回路は、1:1のトロイダルコイルで負帰還を掛けている。  広帯域回路での負帰還は怖い気もするが、QSTの記事では20kHz〜20MHz迄の範囲では殆どフラットな特性である。 


取り敢えず実験してみた。 もう少し感度が欲しい

ループアンテナ本体は、オーディオ用のミニジャックを使用して、着脱できるようにした。 
色々なプリアンプを実験してみようと言うわけだ。 取り敢えず、超簡単な回路から始めて見た。 プラグに直付けされているのは2SK241を2本パラにしたヘッドアンプだ。 回路を簡単にするために、バイアス回路無しで適当な電流が流れるY選別品を使用し、電源電圧12Vで、1本当たり5mAだ。 この写真では同軸は1.7C2Vに変更している。 最初の細い同軸では、感度が低かった。 もっと太ければ、もっと感度が上がりそうだが、3C2Vでは、固くて綺麗なループは作りにくいだろう。 円形にするという方法もある。
回路図はこちら


早速受信機に繋いでみた。 オッ、結構聞こえるじゃないの。 バンドを換えて聞いたが、なかなか快調。  気をよくして、別の場所にある逆Lというか、銅テープを木造2階の屋根裏にダラダラと張ったアンテナと比較してみた。 どうも10dB程S-Meterの振れが小さい。
実際の受信では、遜色ないのだが、S-Meterの振れが小さいのは精神的に良くない(?)

広帯域プリアンプの試作

そこで、簡単なプリアンプを作ってみた。 手持ちの高周波用のOPアンプ、LM6365を使用した。 帯域は725MHz、ビデオアンプ用とのことで、パワーも取れそうである。 回路図はこちら
利得は25倍以下では補正が必要なので約30dBとした。 結果は、GAINが高すぎて7MHz辺りの雑音がS-Meterの読みで100μV以上になり、混変調の嵐となった。 そこで、負帰還を増やして利得を減らし、歪みも減らそうとしたのだが、20dB以下では発振してしまった。
GAINが高けりゃ良いというわけでは無いようだ。 仕切直しである。

再び、FETのヘッドアンプ
所で、この回路ではドレインに50Ωの負荷を繋いでいるが、これではアンプ側から見た負荷抵抗が低すぎるのではないだろうか?。
FETは、並列使用するとgmが増える。 出力インピーダンスも下がりそうだ。 そこで、高周波特性の良い、2SK241を8個並列接続にしてみた。 2SK241は、内部がカスケード接続になっている。 ソース接地のFETとゲート接地のFETが直列に接続され、高い入力インピーダンスと、低い帰還容量を持つ、ハイブリッドな構成だ。 一番最初に作った物は2個並列だが、8本並列なら性能が上がるのだろうか? 実験、実験 (^-^)/

何で8本かというと、配線の都合で特に理由はない。 追試される方は、10ほんと言わず、30本くらい並列にしてみて下さい。 で、結果ですが、2本と較べて、コリンズの51-SのSメータの表示では10dB程度ゲインが上がる。 2本の物と較べると小さい信号が明らかに良く聞こえる。 入力をショートすると、アンプ自体の出しているノイズは多くない。 ところがループを繋ぐとノイズフロアが上がってしまう。 環境の雑音が大きいのだろうか?

QSTの回路
QSTの記事と同じ回路を作ってみた。 但し、電源電圧は手持ちの部品の関係で12Vにしている。 黒い固まりがヒートシンクを付けた軍用FET,CP-666だ。
CP-666というFETは、メーカのデータシートに載っている図からすると、多数の小さなFETを並列に接続したIC構造になっているようだ。 軍用の無線機のヘッドアンプなどに使われるという話で、強大な電波の飛び交う中で混変調を避けて増幅するには、こうした素子を使うのが常識なのだそうだ。 通常は手に入らない特殊FETだが、QSTの記事のおかげで、メーカが直接小売りしてくれる。  上の方のリンクの回路図の説明に入手方法が書いてある。 このFETは、ゲート接地を前提に作られているようで、TO-5の外装は、ゲートに接続されている。 QSTの回路では、ゲートは2.2Mの抵抗で浮いていて、結合コンデンサ、68pFは50Hzでは46Mオームのインピーダンスがある。 ハムが心配だなぁ。
と言いつつ、作ってみました。 回路は、そのまんまです。
心配したとおり、凄いハムです。 シールドケースに入れろと言われればその通りだが、面倒だ。
勿論、段間はトランス結合なので、出力に直接ハムは出てこないが、明らかに50Hzで振られている濁った音で実用にならない。
ソースの抵抗で測ると1V以上のハムが観測される。 これじゃいくら混変調に強いというCP-666でも混変調どころか、変調が掛かってしまう。 

回路変更
アンテナループ自体は、ショートリングであるので、50Hzでのインピーダンスは非常に低いと考えられる。 そこで、QSTの回路のゲートを直接ループに接続した。 回路図はこちらです。 これで、一応ハムは殆どでなくなりました。 混変調も感じないが、いかんせん感度が低い。 FET2本の物と較べても10dBは低く、大きな信号はクリアに聞こえるが、DXは殆ど聞こえない。 帯に短したすきに長し。

各アンプの比較

これらの3つのアンプは、アンテナ基部のコネクタと、電源部のコネクタの2カ所で差し替えることが出来る。 そこで、7MHzのアマチュア無線で聞き比べてみた。 感度的には、8本FET>逆L>2本FET>QST となった。 大きな違いは、逆Lは、パルス性のノイズは大きいが、ノイズフロアが低く、8本、2本のFETのものは、非常にノイズフロアが高いことである。 QSTの回路は、感度が非常に低く、ノイズフロアも低い。 どれも快適に使用できると言うには問題がある。 そこで、オシロスコープを繋いでみて驚いた。
AM変調の波形が見える! それも8本FETでは振幅が200mVP-Pもある。 ダイオードとスピーカを繋いだら何が聞こえるんだろう。
市販のヘッドアンプには、同調回路か、中波のフィルタが入っていますが、なるほど。 1μVを聞こうというのに、100dBも大きな信号が入ってくるのでは堪ったものではない。 

というわけで、更に検討を要すると言うことが判った。 フィルタを入れるか、同調回路を入れて余分な信号を除去するか?
当然DXを狙うなら同調回路を入れて狭帯域にするのが王道だがそれじゃつまらない。 FETを3本くらいにすると良いと思う。

友人が2号機を作りました。 アンプは2SK2413本パラです。 今まで、ノイズが多くてDXは良くなかったようですが、バッチリのようです。 もっとシックに塗装したらいけそうですね。


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