National NC-57 Receiver(1947−1951)

米国ナショナル社が1947年から51年に掛けて生産した通信型受信機 デザインは、優しい円形をモチーフにしているモダンなもので、見た目、小さく見える。 上に置いてあるハマーランドのHQ−100と同じ幅であるが、置いたときの威圧感は無い。 左右対称のデザインで、ハリクラのS40−B等と左右が逆になっている。 ダイアル円盤の中心にノブが付いている。 何気ないデザインであるが、充分な減速比を得るために、極めて複雑なダイアルメカニズムを持っている。 こうしたエントリーレベルの受信機としては技術者の遊び、無駄なコストにも思える。コレクタとしては、楽しいギミックではある。
なんてことないラジオに見えるが、侮れない性能を持っている。 感度は、最新のシンセサイザ受信機と遜色なく、雑音が少なく柔らかい音で疲れない。 局発の電源に使われている定電圧放電管が、通信型受信機の証である。

周波数 : 550kHz〜55MHz 5バンドでカバー

RF Amp 6SG7
Converter/OSC 6SB7-Y
1st IF 6SG7
2nd IF 6SG7
Det. A.N.L. 6H6
First Audio BFO. 6SL7
Audio Output 6V6GT
Voltage Regulator VR-150
Rectifier 5Y3


BFOとノイズリミッタが装備されている。 また、この頃の受信機のお決まりとしてトーンコントローラが付いている。
アンテナトリマが装備され、局発の電圧安定化に低電圧放電管が採用されている。 見た目は優しいが、内容は当時の本格的な通信型受信機である。 実際使用してみると、10分ほど暖めると6.7MHz辺りの航空管制のSSBも安定して聞くことが出来る。 勿論、プロダクト検波は無いので、AGCを切って(BFOを入れると自動的に切れる)、AF-GAINを大きくし、RF-GAINを絞って聞かなければいけない。 これはコリンズのR390等を含め、当時の受信機のお約束である。 東京オリンピックの頃、トリオの9R59、TX88Aというゴールデンコンビでアマチュア無線を始めたが、SSBの局と交信するのは、指先の魔術で同調させるのが腕と言われていた。 JR-60という高級型では、低電圧放電管とプロダクト検波が採用されていて、憧れたものである。 回路的には局発を分離し、低電圧放電管も採用したJR-60の方が回路的には進んでいるのだが、`安定度ではNC-57も負けていない。 プロダクト検波がないのは負けてますけど。

真空管は上記のように、RFから出力管の前まではメタル管で、オーディオ出力管と整流管はガラスのGT管である。
日本では、戦争の影響からか、ST管から、一挙にMT管に移行したが、メタル管は雰囲気がよい。 但し、真空管らしいヒータの点灯した景色は見えないのが残念である。

ナショナルといえば HRO シリーズだ。 James Millen の設計による凝った機械的構造は、その後の製品にも影響を与え、この受信機も例外ではない。 まず、自製のバリコンが素晴らしい。 国産受信機でよく見られたアルプスのバリコンと較べ、電極のアルミ板の肉厚が厚い。 厚けりゃ良いという訳でも無いだろうが造りの良さを感じる。 こうしたコストが安定度に繋がるのであろう。














機械的に凝るのが、ナショナルの真骨頂である。 Hallicraftersの同時代の代表的なS-40Aは、別項で紹介しているが、ダイアルは単なる糸かけである。 シンプルで安価で合理的であり、後世の9R59等は、糸かけ横行ダイアル、Hallicrafters 最後の高一中二であるSX-110でもダブルギアでスプレッドを動かしているとはいえ、基本的には糸かけであるが、ナショナルは違った。

Hallicraftersがバリコン直結の透過照明目盛板を180度(バリコンは180度回転ですからね)廻しているのに対し、Nationalは、ツマミを同軸とし、しかもバリコンが180度回転するのに対し、目盛り板は270度回転する。 この90度の差を作るために、この凝ったダイアルメカニズムを開発するところがNationalらしいというか、無駄であり、今日貴重な受信機である所以である。

写真の一番上にギアが見えるが、この軸は2重になっている。 内側の軸はメインダイアルで駆動され、バリコンに開けられた穴に差し込まれ固定されている。スプリングとギアの後ろのダイアル軸に挟まれた真鍮製の円盤がフリクションでメインバリコンを廻す。


奥に見えるダブルギアはメインバリコンの軸に装着され、手前のギアを回転させる。 このギアにメインダイアルの目盛板が接続されているので、目盛板は270度回転するわけである。 つまり、この凝ったダブルギアは、単に目盛板を回転させるために装備されているのである。 何という無駄。 何という贅沢。



メインバリコンとスプレッドバリコンは鉄板で強固に結合され、シャシに直接強固に固定されている。 Hallicrafters S40/S38がゴムブッシュで浮かせてあるのと対照的である。 勿論、直接固定されている方がバックラッシュが無く、良いのであるが、機械精度を要求される。 ハウリングも起こしやすい。







ちょっと見にくいが、スプレッドダイアルの構造である。
手前の細い軸にスプレッドダイアルのツマミが付く。 手前の糸かけプーリの軸を貫通して後ろに出てフライホイールがあり、その後に出ている細い軸から糸かけでスプレッドバリコンのプーリを廻す。
バリコン軸には2つの同サイズのプーリがあり、糸かけで戻ってきて、同軸2重のスプレッドダイアル軸の外側の少し小さいプーリを廻し、ダイアルメモリ板を270度廻すという構造である。

性能に直結する部品配置とデザインを両立させるため、そのギャップを複雑なメカで埋めるという、ナショナルならではの構造である。

この糸は、ダイアルメカを分解しないと掛け直せない。 非常に難しいので糸が切れないように祈っている。 手前の白い糸はオリジナルと思われるが、良い品質で、当分切れそうにはないが、奥の黒い糸は取り替えた物と思われる。 入手時に手前の糸が外れていて、簡単に張り直せると思って、手間取ってしまった。
何より、メカを外すのには1/8インチの細く長いボックスレンチが必要で、これがなかなか売っていない。 東急ハンズにもなく、秋葉原まで探しに行く羽目になった。



文章と限られた写真では十分説明できないが、とにかく複雑な構造であることは、ご理解頂けたことと思う。

こうした機械的構造がNationalの魅力でもあり、凋落の原因でもある。 こうしたクラフトマンシップをバックボーンとした米国のメーカは安価な日本製品に駆逐され、コリンズの撤退で幕を閉じるのである。


シャシ裏はシンプルである。 50年の歳月を経ているが、手前下のオレンジ色のコンデンサが交換されているくらいで、他はオリジナルであるが、正常に機能しているところが凄い

真空管のソケットも、高価なステアタイト製が使われている。
さすがに、ブロックケミコンは劣化していたので、大容量の新品に交換した。
コイルパックの一番上は、RF入力回路で、アンテナトリマで調整するので、パックにトリマは付いていない。

注目すべきは、中段の高周波増幅のロード回路のトリマコンデンサはマイカが使われているのに、最下段の局発のトリマはセラミックが使用されている。 温度特性を考えたと思われるが、見えないところも手を抜いていない。 また、コイルパックが非常に小さいことにも注目したい。 トリオやハリクラと比べてコンパクトなのは、こうしたところにも秘密がある。 コイルパックが小さい分、回路部分はゆったりと作られている。




この受信機の欠点は選択度の不足である。 AMが主流の1950年頃は充分な性能だったのであろうが、今日の混雑した電波状況では心許ない。 

そこで、恒例のセラミックフィルタを挿入する。 FETのバッファで受け、初段のIFアンプのグリッドとIFTの間に挿入する。 帯域幅は4KHzのものを使用した。 これで、AMも、SSBもそこそこ実用になる。 もう少し凝るなら、狭帯域と広帯域のフィルタを切り替えるようにすべきであるが、簡単にすました。 基板は作らず、空中配線で構成したのはシャシ裏に設置して違和感を生じないためである。 簡単な回路なので、ブラブラする部品は無い。



回路図は説明の要は無いだろう。 手持ちの部品でろくに計算もしないで、適当に作ったが、快調に動いているからOK。 S40-Aにも同じ回路を内蔵したがFETはオーディオ用の2SK30を使用した。 455kHzって、昔は高周波だと思っていたが、今ではオーディオに毛が生えた程度。 お気軽、お手軽である。 50年の技術の進歩は伊達じゃないという訳だ。 フィルタは指定の2.2kの抵抗で終端している。 これをキッチリしないと帯域内の特性が暴れる。 今まで、適当に合わせていたが、FRMSというフィルタ特性測定装置を使用するようになって重要だと認識した。






これが設置後の写真であるが、どこにあるでしょう? 何となく他の配線になじんで違和感が無いと思っているが如何でしょうか?

実は、他に、もう一つFET一石の回路を追加している。 これは、局発の発信周波数を外部に引き出して周波数カウンタに受信周波数を表示させるもので、簡単なソースフォロワで局発出力を外に引き出している。
回路図はS40-Aの記事に書いておいた。

電源はヒータ電圧を半波整流し、3端子レギュレータで5Vとして使用している。